日経MJに内食に関する興味深いデータが掲載されていました。
日経産業地域研究所が首都圏の主婦層に調査したところ、食事作りでは料理の彩りの良さへのこだわりが目立った。同時に 「高くても安全な材料を使った料理が食べたい」が7割を超えるなど、改めて食の安全を重視する姿勢がうかがえた。特に高所得層で意識が高く、「生産者の顔 が見える」生鮮品などの商機はさらに広がりそうだ。(2015年1月19日付 日経MJ)
この記事によれば、内食つまり自宅での食事では、食材に関して価格よりも彩り・安全安心を優先する主婦が多いようです。特に、
彩り→トマトなどの野菜
安全安心→米や精肉
こだわりのブランド・商品→米・食用油・調味料
の傾向が強く、
「高くても安全な材料を使った料理が食べ たい」に肯定的な層は72・8%に達し、高所得層では82・1%に高まる。(同上)
という高い割合の主婦が、品質・安全安心面に注意を注いでいることがわかります。
このようなデータを見ると、節約対象になることの多い食品にもついに品質重視の時代が来たかのように思えますが、実際にはそうとは言えません。というのも、このアンケート調査の対象がかなり偏っていると言わざるを得ないからです。
この調査の対象は、
首都圏在住
ネット利用者
20~60代の同居人のいる既婚女性
自宅での調理の大半を自分が行う人
食材の値段が大体頭にはいっている人
です。この対象者として当てはまりそうなのは、
正社員の専業主婦
大企業に勤める旦那を持つ共働き女性
中小企業経営者の妻
などではないでしょうか。比較的、経済的に余裕のある層です。余裕があるからこそ、価格よりも美味しさや彩り・安全安心を優先するのでしょう。逆に言えば、
地方の郊外在住
中小企業で夫婦とも働く女性
非正規で夫婦とも働く女性
などの、比較的経済的に余裕の無い層は、上記結果にそぐわない可能性があります。
首都圏で小売・飲食店をするならば、価格よりも品質・安全安心面を訴求すればいいのです。いや、訴求しなければ、首都圏に住む経済的に余裕のある層を集客することはできません。例えば、成城石井はこの層をターゲットにするために、付加価値の高い高単価商品主体なのでしょう。逆に、地方で商売をするならば、価格訴求は依然必要です。例えば、業績の伸びが著しいコスモス薬品は、地方出店が主体で、低価格販売する食品がそのウリです。
多くの小売業が消費の冷え込みに苦しむなか、逆に「最も追い風を受けている企業」(イオン幹部)が、九州地盤のドラッグストア、コスモス薬品だ。(中略)増税の影響を受けやすい年金受給者が多く住み、過疎化が進む土地こそ強さは際立つとみて積極出店する。(2015年1月19日付 日経MJ)
郊外・地方に店舗の多いイオンが、価格訴求により業績回復を目指すのも、ターゲット層に関連するのでしょう。
☆今日のまとめ☆
価格よりも彩り・品質・安全安心を優先する主婦が多いのは、そのアンケート対象が首都圏在住者で、正社員や中小企業経営者の妻だからではないか。
地方在住者や非正規雇用者の妻は、依然価格優先と考えた方がいいかもしれない。
WSJを読むには、基本的な英単語を知っていなければなりません
- 今日のこぼれ話☆
いつか忘れましたが、日経夕刊の一面に、値上げしたはずの食品実勢価格が下がっていることが、報じられていました。
何にお金を使うかについて、消費者は歴然と差を付けているのでしょう。